日々の泡

東京の下町に住む会社員のブログ。家族とかクルマとか色々。

W123と僕 前編

初めてのブログ。

やっぱり車のことか。

初めての愛車は、僕と同い年のメルセデス・ベンツW123。
やっと見つけた憧れの車は、解体寸前に売りに出され、2年間も野ざらしになっていた。
塗装は粉が吹き、タイヤはぺしゃんこ。だけどエンジンはすこぶる元気だった。
手を入れるたび、応えてくれる車だった。
少しずつ以前の輝きを取り戻していく姿に感動しながら、運転やメンテナンスの楽しさを教わり、クルマが与えてくれる自由とは何かを知った。
一生の出会いや別れを共にしたのも、この車。どんな時も寄り添っていてくれる分身のような存在だった。

なのに、今思えば、かなり衝動的にW123を手放してしまったような気がする。そんな愛車に対する後ろめたさや未練をようやく克服しつつあるのか、しみじみとあの四角い車を思い出す。

<W123との出会い>
W123という車を知ったのは「人生はビギナーズ」という映画だった。
ユアン・マクレガー扮する草食系モヤモヤ男子が、前向きな気持ちを持つことで人生を前に進める映画だったのだが、これが当時の僕の気持ちに完全にフィットした。

彼の置かれた状況が自分と重なったこともあり、何度も映画を見ては自分を投影したものだった。

で、その主人公が乗っていたのがW123 300Dという車だった。

車などろくに知らなかった自分にとって、「こんなベンツがあったのか!」と衝撃的ですらあった。

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僕のベンツに対するイメージは世間一般のそれと同じで、「オラオラ系」な印象しかなかったのだが、W123は少し丸みを帯びたフォルムと愛嬌のある丸目で優しさすら感じるデザインだった。

30年という時間によるヤレ感もあって、それはもう、むちゃくちゃオシャレに見えたものだった。

映画に自分を投影させるなんて、今考えると痛々しい以外の何ものでもないのだけど、僕はそんな動機で初めての愛車を持つこととなった。

 

ヤフオクで発見!>

車を買おう!
そう思い立ったとしても、これが新車だったり年式の浅い中古車だったりすればそんなに難しい話ではかもしれない(お金のことは別として・・・)。

W123は旧車と呼んでもよいくらい年季が入っている。
1976~1985年までの車だから、少なくとも30年は経っている。

結果的には初心者が持つ旧車としては、そんなに難易度が高くない車だっただが、そもそも良い車両を見つけるのが難しかった。現車を見ても何をチェックすれば良いのかもわからないし、分かっていたとしても、判断ができない。

僕がラッキーだったのは、そのようなアドバイスをしてくれるFさんという車のことなら何でも知っている方が身近にいたことだ。

僕のW123はFさんが見つけてきてくれた。
ヤフオク」で。
45万円。アイボリーの丸目。ユアン・マクレガーが乗っていたやつは北米使用なので、同じ丸目でも形が違うし、バンパーの大きさも違うけど、自分にとっては大した違いではなかった。
グレードは230。Eがつかないので、インジェクションではなくてキャブレーター。
ま、そんなことは当時はろくに分かっていなかったのだけど。

「とりあえず見に行ってみる?」というFさんのワゴンR(マニュアル)で、埼玉の久喜まで現車を確認しに行ってみた。

久喜まで道中、どれだけ気持ちが昂ぶっていたか。今でも思い出す。
あのW123を見れる。
しかもそれが自分の愛車になるかもしれない・・・!
前日はろくに眠れなかった。

思いの外に「郊外」であった久喜に下り立ち、指定された駐車場に着くと、既に出品者らしき人が待っていた。路肩には赤いアルファ147。どうやらその方の車らしい(まさかこの後に自分がアルファに乗ることになるとは)。

砂利のすき間から雑草がぼうぼうと生える駐車場にW123は「ずしっ」と鎮座していた。

これが夢にまでみたW123。

だが、

丸目2灯のヘッドライトは曇っており、アイボリーの塗装は粉がふいていた。
ちょっと汚れた手で触ったら、拭いても取れないほどにざらついていた。
ひび割れたタイヤは凹んでおり、もう何年も動いていないんじゃないかと感じさせるほどに朽ちていた。

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*隣にルーテシアがいたんだね

 

それでもそこにあったのは、もしかしたら自分のものになるかもしれない憧れの車だった。

「とりあえず火をいれてみよう」とFさんがエンジンをかけた。
一発でかかり、耕運機のような音が鳴り始めた。

「ダダダダダダダダダ」と、ぶるぶる震えながらも、数分立つとアイドリングが安定してきた。

Fさんが電装、足廻り、ミッション、排気等の状態を確認してくれた結果、

「これは買いだよ。ボディは磨けばキレイになる」

この一言で入札が決定した。

価格は45万円。果たして落札できるのかと心配したものだった。

ちなみに帰り道、浮かれすぎていたのか蓮田PAで財布を無くしてしまった・・・。
(幸い発見された)

その日以来、毎日どころか一時間毎にヤフオクに出品されたW123を確認していた。

1年以上出品されているのに、そんな簡単に入札がつくわけがない。
それでも心配したし、オークション終了直前に入札をした。

そして落札。他の入札は無かった。
その夜も興奮して眠れなかった。

 

<W123がやってきた>
数日後、ドゥカティに乗ってやってきた出品者からキーを受け取り、再びFさんと久喜に向かった。

仮ナンバーを取り付け、ヒビだらけのタイヤに恐る恐る空気を入れ、いざ整備先の横浜に向かう。もちろん自走で。

ボディに粉がふいていても、車検を通すにはタイヤ交換だけで済んだ。

ちなみにこの写真は車検通過直後にFさんに撮ってもらったもの。

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僕もついにクルマを持てた。

今後も何台かの車を買うかもしれないが、この時ほど感動することはないだろう。

さて、これからユアン・マクレガーよろしく、主人公になりきったカーライフを過ごすことになるか・・・といえば、そうでもなかった。